Ein Heftiges Heft

heftig: 1) von starkem Ausmaß, großer Intensität 2) leicht erregbar, aufbrausend (von Duden)

東大ドイツ語2023 [4](独文和訳): 和訳と軽い解説

タイトル通りです。下線部は設問中で和訳を要求されている箇所です。

Im täglichen Leben bezeichnen wir oft etwas, was wir für wenig Geld bekommen haben, als „preiswert”. Wer die Sprache etwas sorgfältiger verwendet, ist sich jedoch bewusst, dass dieses Wort nicht die Kleinheit des aufgewendeten Geldbetrages, sondern das Verhältnis desselben zum erworbenen Vorteil bezeichnet. Preiswert ist etwas, was seinen Preis wert ist, oder, im gesteigerten Sinne, was einen höheren Wert hat, als sein Preis anzeigt. Wenn ein Apfel einen Euro kostet und ein anderer, gleich großer Apfel achtzig Cent, kann es sein, dass der erste Apfel preiswerter ist als der zweite, weil er zum Beispiel frischer ist oder besser schmeckt. Ob etwas preiswert ist, hängt aber nicht nur von der verkauften Sache und ihrem Preis ab, denn wer wenig Geld hat, kauft sich vielleicht lieber den billigeren Apfel, während ein anderer, der mehr hat, den frischeren vorzieht. Sowohl der Preis als auch der Wert unterliegen nämlich der subjektiven Einschätzung.

全文和訳(クリックで展開)

日々の生活の中で私たちは,少ないお金で手に入れたものを,しばしば “リーズナブル” (preiswert) だとあると表現する。しかし,もう少し慎重に言葉を使う人は,この単語が使った金額の少なさではなく,手に入れた利益に対する使った金額の割合を指していることに気づいている。リーズナブルな物というのは,その価格 (Preis) 相応の価値 (Wert) のある物,あるいはより広く,その価格が示す価値よりも高い価値を持つ物のことである。ある 1 個のリンゴが 1 ユーロして,もうひとつ別の 1 個の,同じ大きさのリンゴが 80 セントするとき,後者に比べて前者の方が,たとえばより新鮮あるいはよりおいしいがために,よりリーズナブルだということもありえる。ある物がリーズナブルかどうかは,売られている物とその価格のみで決まるわけではない。持っているお金が少ない人は,安い方のリンゴを買いたいと思うかもしれないし,それに対し,持っているお金が多い人は,新鮮な方を優先するかもしれないからだ。すなわち,価格と価値は,どちらも主観的な評価に左右されているのだ。

直訳と意訳の中間くらいの文体です。実際の採点基準などは一切知らないので,あくまで文の内容の確認のためのみに使用してください。

詳しい解説は “続きを読む” を押してください。ご指摘などがあればコメント欄か @Morojenium へどうぞ。

文ごとの詳しい解説とコメント

一文づつ説明します。

1.

Im täglichen Leben bezeichnen wir oft etwas, was wir für wenig Geld bekommen haben, als „preiswert”.
▸ 日々の生活の中で私たちは,少ないお金で手に入れたものを,しばしば “リーズナブル” (preiswert) だと表現する。

was ... は,etwas を先行詞に取る関係代名詞 was による節です。

2022 年もそうでしたが,この大問の文章はあるドイツ語の詞そのものについてドイツ語を使って説明しており,ドイツ語で書かれているからこそ意味がある文章であるため,原文を読んで手に入る情報を保持したまま “訳す” のがかなり面倒/困難です(去年ほどではないですが……)。和訳という体裁を保ちつつ preiswert をそのまま preiswert という語として導入したいので,苦肉の策でもとの語を括弧内に示しています。詳しくは後々。

2.

Wer die Sprache etwas sorgfältiger verwendet, ist sich jedoch bewusst, dass dieses Wort nicht die Kleinheit des aufgewendeten Geldbetrages, sondern das Verhältnis desselben zum erworbenen Vorteil bezeichnet.
▸ しかし,もう少し慎重に言葉を使う人は,この単語が使った金額の少なさではなく,手に入れた利益に対する使った金額の割合を指していることに気づいている。

wer ... は,der を先行詞に取る関係代名詞 wer による節ですが,現代では多くの場合 der は省略され,この文でもそうなっています。また sichDAT etw.GEN bewusst “~を意識している” にも注意。属格の項はあとに続く dass 節です。nicht A sondern B 構文の “A ではなく B” を意識すると構造が見えやすいでしょう。

das Verhältnis は “関係” の義もありますが,“比/割合” の義もあり,文脈的に後者で訳すのが適切です。また das Vorteil は “利点” の義もありますが,それでは意味が通らないため文脈から再検討すると,das Verhältnis desselben zum erworbenen Vorteil は要するに Wert に対する Preis の割合のことを示していると考えるのが自然です。より具体的には,いわゆる価性比とか価心比とかも among これに該当する概念でしょう。Wert に対して Preis が適切であればその商品は “リーズナブル” であるということです。ここでは Vorteil はふんわり “利益” としておきます。

3.

Preiswert ist etwas, was seinen Preis wert ist, oder, im gesteigerten Sinne, was einen höheren Wert hat, als sein Preis anzeigt.
▸ リーズナブルな物というのは,その価格 (Preis) 相応の価値 (Wert) のある物,あるいはより広く,その価格が示す価値よりも高い価値を持つ物のことである。

etw.GEN oder AKK wert sein で “~の価値がある” です。この文では対格を取っていますね*1

preiswert が preis + wert である以上,„etwas, was seinen Preis wert ist, ist preiswert“ というのはドイツ語で読めば当たり前のことなんですが,preiswert に “リーズナブル” という訳語をつけてしまったためにそのニュアンスを表現できず,苦肉の策で括弧を付けています。

ちょっと長ったらしいですが,結局この文はひとつ前の文を補強する形で単に preiswert ⇔ Preis ≤ Wert ということを言いたいだけですね。

4.

Wenn ein Apfel einen Euro kostet und ein anderer, gleich großer Apfel achtzig Cent, kann es sein, dass der erste Apfel preiswerter ist als der zweite, weil er zum Beispiel frischer ist oder besser schmeckt.
▸ ある 1 個のリンゴが 1 ユーロして,もうひとつ別の 1 個の,同じ大きさのリンゴが 80 セントするとき,後者に比べて前者の方が,たとえばより新鮮あるいはよりおいしいがために,よりリーズナブルだということもありえる。

gleich groß は gleich が副詞で “同じくらい大きい/大きさが同じ” ということです。anderer と großer はともに Apfel にかかる形容詞です。形容詞句が複数個あり名詞に並列させたいときは,このようにコンマをはさみます。たとえば:

Hält 200 Schritte lang schwache, wilde Pokémon ab.
▸ 200ぽ すすむ あいだ よわい やせいの ポケモンが まったく でて こなくなる。

kann es sein の können は,ここではどちらかというと英語の may に近い感覚で,不確実性を表すために使われています。kann es sein の es は以降の dass 節を指します。

5.

Ob etwas preiswert ist, hängt aber nicht nur von der verkauften Sache und ihrem Preis ab, denn wer wenig Geld hat, kauft sich vielleicht lieber den billigeren Apfel, während ein anderer, der mehr hat, den frischeren vorzieht.
▸ ある物がリーズナブルかどうかは,売られている物とその価格のみで決まるわけではない。持っているお金が少ない人は,安い方のリンゴを買いたいと思うかもしれないし,それに対し,持っているお金が多い人は,新鮮な方を優先するかもしれないからだ。

etw.DAT etw.AKK vorziehen は “与よりも対を優先する・好む” です(今回は与格はないですが)。ようするに lieber kaufen の言い換えなので “新鮮な方を買いたいと思う” というわけですが,それはそれで直訳からちょっと逸脱しそうなので一応遠慮しておきます。

聞き手/読み手の意外性を期待する否定 aber nicht は “わけではない” と訳出しておきました。また文が長めなので,denn の前まで一旦訳文を切って分けています。

6.

Sowohl der Preis als auch der Wert unterliegen nämlich der subjektiven Einschätzung.
▸ すなわち,価格と価値は,どちらも主観的な評価に左右されているのである。

nämlich は前文の帰結を表し,deshalb とかと違って明確な因果関係というほどでもないときに用いられます。“つまり” とか “要するに” みたいな感じです。

etw.DAT unterliegen は状況に応じてさまざまな訳(負ける,屈する,患う,影響を受ける,受ける,経験する……)が考えられますが,共通するコアイメージは “従う” です。ここでは “影響を受ける” で取りましょう。

*1:属格のファンとしては悲しい限りです