Ein Heftiges Heft

heftig: 1) von starkem Ausmaß, großer Intensität 2) leicht erregbar, aufbrausend (von Duden)

【入門者向け】誰でも簡単!ドイツ語の単語を正しく読むためのテクニック

おはようございます,Мороже です🛰️*1 みなさんご存知の通り,ドイツ語の綴りと発音の対応は,英語に比べとても分かりやすく規則的であることで有名です。今日はドイツ語の単語の正しい発音が簡単にわかるテクニックを伝授しようと思います!

ところで具体的なテクニックを説明する前に,まずは以下の 14 個(?)の単語を発音してみてください。ドイツ語の綴りと発音の対応は英語に比べとても分かりやすく規則的なので簡単ですね!🛰️*2

  1. gestern
  2. stibitzen
  3. lebendig
  4. vierzig
  5. wachst
  6. am nächsten
  7. Hochzeit
  8. sucht / Sucht
  9. platschen / latschen
  10. hinweg / Hinweg
  11. üblich / übrig
  12. Krebse
  13. Herzog
  14. Einigler

(※外来語の発音はカオスすぎるので,本来語に絞って出題しています。)

解答と解説

(↓ ネタバレ防止用の空白 ↓)

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gestern /ˈɡɛstɐn/ “昨日”

der Stern /ʃtɛɐ̯n/ “星” という語があるので,接頭辞 ge- + Stern ……というわけではなく,gestern でひとつの語です*3。よってアクセントは最初の音節に置き,st も /ʃt/ ではなく /st/ で読みます。これは超基礎単語なので正解……というか知ってた人も多いかも?

stibitzen /ʃtiˈbɪt͡sən/ “くすねる”

st は語頭なので /ʃt/ と読みますね。ところでこの動詞のアクセントは 2 つ目の i にあります。そんなことは綴りに書いておらず,当然初見でわかるわけがない*4ので,諦めてください。

lebendig /leˈbɛndɪç/ “活発な”

最初の /le/ は /lə/ とかでも大丈夫です。もちろん leben “生きる” と同源の形容詞ですが,なぜかアクセントが 2 つ目の e にあります。もちろんそんなことは綴りに書いておらず,当然初見でわかるわけがないので,やっぱり諦めましょう。

vierzig /ˈfɪɐ̯t͡sɪç/ “40”

vier “4” の ie は長いですが,vierzehn*5 や das Viertel “四分の一,クォーター” ではなぜか短いです。うお〜~

wachst /ˈvaxst/ または /ˈvakst/

wachen /ˈvaxən/ “目覚めている” の二人称単数現在なら du wachst /ˈvaxst/ ですが,wachsen /ˈvaksən/ “成長する” の二人称複数単数なら ihr wachst /ˈvakst/ です。つまりこれ単独では発音が定まらないという罠ですね。(実際は人称代名詞と共起するので確定しますが)

分かりづらいのでパラダイムを示しておきます:

wachen “目覚めている” - du wachst, er wacht, ihr wacht
wachsen “成長する” - du wächst, er wächst, ihr wachst

am nächsten /ˈnɛːçstən/*6 “最も近い”

これは nah /naː/ “近い” の最上級なので ä は長母音で読みます。また «chs» はここでは /ks/ ではないので注意しましょう。

Hochzeit /ˈhɔxˌt͡saɪ̯t/ “結婚式” または /ˈhoːxˌt͡saɪ̯t/ “最盛期”

まず hoch /ˈhoːx/ “高い” の o は長いです。そして “結婚式” の Hochzeit の hoch もこれに由来しています……が,現代では ‪“結婚式” の意味では o は短く読み,逆に “最盛期” の意味の方では o を長く読むことで区別します。よってこれも単独では定まりません。非常に意地悪ですね。あ,もちろん “意地悪” というのはこれを書いている僕のことではなく,ドイツ語の正書法に対する形容です。

ところでドイツ語には “アクセントのある短母音があって,その次に 1 文字で書ける子音があるとき,その子音を重ねて綴る” というルールがあります(例外あり*7)。ただし k および z を重ねるときはそれぞれ ck, tz と綴ります。ruckzuck とか Blitz とか。

よく勘違いされているのを見かけますが,“1 文字で書ける子音” というのはとても重要で,たとえば /dax/ “屋根” という音を綴るとき,/x/ は ch で書くので Dach と書くわけですが,ch が 1 文字で書けない(というより cch とか chch とか書くわけにもいかない)せいで a が短いことを表せません。つまり,逆に音を知らない状態で綴りを読もうとする人にとって,das Dach という文字列から a を短母音であると判断する根拠は一切ないわけですね。実際,nach や die Schmach “不名誉”の a は長母音で,この項で取り上げている hoch の o も長母音です。

母音のあとに続くのが子音クラスタである場合も話は同様です。たとえば das Obst “果物” の o や die Wüste “砂漠” の ü は長母音ですが,これらの長短を綴りから読み取る方法はありません。う~んなんだこの言語……

sucht /ˈzuːxt/ “探す”(三人称単数現在) vs die Sucht /ˈzʊxt/ “中毒”

上のと似たような例です。suchen の u は長いですが,名詞の Sucht の u は短いです。見分けるコツはそれぞれの単語の音をあらかじめ覚えておくことですね。ちなみにこの 2 つに語源的関連性はありそうでなかったりします。

platschen /ˈplat͡ʃən/ “液体がはねる” vs latschen /ˈlaːt͡ʃən/ “ぶらつく”

tsch も 4 文字あるので重ねて綴ることはできません。結局,こういうケースで長短は絶対に分からないので,素直に諦めましょう。

hinweg /hɪnˈvɛk/ “向こうの方に離れて” vs Hinweg /ˈhɪnˌveːk/ “行きしな”

weg “離れて” の e は短いですが,その由来となっている名詞の der Weg “道” *8の e は長いです。じゃあ weg の方を weck とか書けばいいのにとは思うのですが,おそらく機能語的であるかつ語源的綴りを保守しているためか,例外的にそうはなっていません。そのせいで hinweg と Hinweg で文字列 «weg» の長短が異なるという残念なことが起きています(ついでにアクセントも違う)😵‍💫

üblich /ˈyːplɪç/ “普通の” vs übrig /ˈyːbʁɪç/ “残っている”

üblich は語幹 üb- + 接尾辞 -lich でこの b は形態素末なので /p/ と読みますが,übrig は über + ig なので /b/ のままです。まぁ知らないと不可能ですね。似たようなペアに niedlich vs niedrig があります。

Krebse /ˈkʁeːpsə/ “蟹; 癌”(複数形)

der Krebs の複数形です。e は /ɛ/ で読まれることもあります。

形態素境界を挟まないなら,破裂音に続く s は(/z/ ではなくて)/s/ で読まれます。逆に absehbar “予測可能な” の s や Insel “島” の s は /z/ で読まれますね。

Herzog /ˈhɛɐ̯ˌt͡soːk/ “公爵”

her(-) “こちら側に” は /heːɐ̯/ と /hɛɐ̯/ のどちらも聞かれます。しかし her(-) と Herzog に特に関係はなく,Herzog の e は短母音としてのみ読まれます。めっちゃ動作名詞みたいな見た目してるのに……

ちなみに die Herberge “宿”*9 の her も /hɛɐ̯/ です。(もちろん beherbergen とかもそう)

Einigler /ˈaɪ̯nˌiːɡlɐ/ “まるくなる”

まるくなる” はポケモンのわざの名前ですが,まぁ本来語と言ってさしつかえないでしょう。

ドイツ語をある程度勉強している人が Einigler を目にすると,おそらく einig /ˈaɪ̯nɪç/ “すこしの” が真っ先に思い浮かぶと思いますが,その気持ちをまず抑えて前綴り ein- で一旦区切り,さらに i を長母音として読む必要があります。ein + Igel /ˈiːɡəl/ “ハリネズミ” + 動詞接尾辞 -en の einigeln “ハリネズミのように丸まる” という動詞を知らないと絶対無理ですね。

ところでドイツ語では(少なくとも本来語においては)長母音 /iː/ はだいたい ie で書いてくれる*10のですが,Igel,Iris,Ire など語頭の /iː/ が I で書かれているパターンがあります。/ˈziːɡəl/ なんかはちゃんと Siegel と書くのでちょっと奇妙に感じますよね?これはドイツ語がフラクトゥーアで書かれていた時代の慣習によるものです。フラクトゥーアでは大文字の I と J が同形(もしくは,似ているがほぼ同形)であるため,Iegel と綴ってしまうと Jegel と読めてしまい,曖昧さが生まれるから避けられたというわけですね。

結局,発音が簡単にわかるテクニックってなに?

辞書を引くことです


*1:これは pop'n music のパラボーというキャラを表しています(パラボーかわいくない?)

*2:これは pop'n music のパラボーというキャラを表しています(パラボーかわいくない?)

*3:めちゃくちゃ遡ると ges+tern です

*4:Haubitze “榴弾砲” とか知ってたら分かるかも?

*5:ここの zehn の eh が曖昧母音化することもあります

*6:ä の長母音はここではとりあえず /ɛː/ と書いておきます

*7:das, ob, an などの機能語的なものや,接尾辞 -nis,Bus や Bot のような新しい外来語など

*8:英語 away も a + way ですね

*9:フランス語 auberge, イタリア語 albergo

*10:gibt, Brise, Mine「呼んだ?」