Ein Heftiges Heft

heftig: 1) von starkem Ausmaß, großer Intensität 2) leicht erregbar, aufbrausend (von Duden)

ドイツ語の冠詞及び指示・関係代名詞(前編)

おはようございます,Мороже です!ヾ(❀╹◡╹)ノ゙❀ 昨日に引きつづき,今日もドイツ語の話をします。

今回のこの記事は「ドイツ語の冠詞及び指示・関係代名詞」の前編です。前編では大まかな使い方と格変化について完結にまとめ,後編 では特に指示・関係代名詞の属格について詳しく取り扱います。属格の使用頻度はあまり高くないため,始めたての方や,単純に表を見に来た方はこの記事だけ見て頂ければとりあえず満足していただけると思います。それではいきましょう。



機能

ドイツ語の冠詞・指示代名詞・関係代名詞にはそれぞれ異なる文法的機能が備わっていますが,語形はよく似ています。それぞれの文法的機能をざっくり*1説明します。

冠詞

めちゃくちゃ雑に言ってしまえば英語と同じです。詳しい説明がほしいという人は xenom's Database の 英独仏:冠詞 を参照するとよいと思います。

たとえばロシア語がそうであるように格は名詞そのものの屈折で表現されることが多いですが,ドイツ語では主に結びつく冠詞・不定冠詞・形容詞の屈折で示されます。ゆえに女性名詞や複数名詞の属格,また複数でない名詞の与格のように,定性のないゼロ語尾の名詞で,格を明示するためだけに冠詞が付加されていることがあります。(冠詞によって定性が付加されているわけではないことに注意してください!)

Er zieht Kaffee dem Kakao vor.
▸彼はココアよりコーヒーが好きだ。

Möchtest du dem Frubberl einen Spitznamen geben?
アマカジに ニックネームを つけますか?(ポケモンSWSH)

付加語的指示代名詞*2

冠詞は主に限定を表すだけですが,付加語的指示代名詞はより強い照応的機能を持ちます。日本語で言う「この」とか「その」に対応します。

名詞的指示代名詞

主に前方照応的機能を持つ3人称の人称代名詞*3と異なり,強めの照応的・直示的機能をもちます。具体的な用法は次のとおりです。

  • 直示的機能

    • 中性単数にして見えている人やものを話題に導入します。ロシア語の это に相当します。つまり,指すものの性や数にかかわらず,常に中性単数にします*4
    • 既に話題に導入されているものも直示します。これは性数格によって変化します。
  • 照応的機能

    • 中性単数にして前文の内容とかを指します。 es によく似ています。
    • 中性単数にして zu 不定詞句 や dass 節 などを指します。これを用いることで英語と異なり,動詞の前置詞目的語として zu 不定詞句 や dass 節を取れます。(z. B. Sie freut sich schon darauf, dich kennenzulernen.)
    • 中性単数にして was 節を受けます(ロシア語の то, что の то)。wer 節も受けられます(主格なら省略可能)。
    • 口語的な用法で,3人称の人称代名詞と同じように使うこともできます。 (z. B. Suchst du deinen Bruder? Der kommt gleich. )
    • 性数が同じ名詞を受けます(フランス語の celui/celle)。「私のノートと彼のそれ」と表現するときの「それ」です。 (z. B. Die Spielmechanik von PMD2 entspricht zu großen Teilen der aus den vorausgegangenen, sowie zukünftigen Teilen der Reihe. 斜線部の der は der Spielmechanik(与格) で, entspricht DAT 「~と同じである」の DAT の部分です ) 冠詞っぽい単語の後に前置詞句が続くパターンはこれ以外にも冠飾句がありこちらの方が頻度が高いですが,名詞的指示代名詞の可能性も常に忘れないようにしましょう。

中性単数の das が前置詞と結びつく場合, da- + 前置詞 という形に縮約します。たとえば mit と結びつくときは damit です。前置詞が母音で始まる場合は,dar- という形になります*5。たとえば über なら darüber,an なら daran です。

縮約は体系的ではなく,よく使われる一部の前置詞に限られます。たとえば ohne と das は結びついて darohne とはならず,普通に ohne das と表現します。wegen は deswegen,trotz は trotzdem という形があります。

関係代名詞

これもだいたい英語とかと同じですが,格変化します(ロシア語の который みたいな感じ)。前置詞とともに使うことができますが,そのときは関係詞節の(表層的な位置の意味で)最初に前置詞句を置きます。先述のような屈折により前置詞と関係代名詞の結びつきが強いので,英語のように前置詞と関係代名詞を分離することは当然できません。(z. B. das Haus, in dem er wohnt)

関係代名詞と結びついた前置詞が名詞句の修飾句になっている場合でも,前置詞句は関係詞節の最初に置くことが多いです。たとえば「そのうちの多くは……」という関係詞節をつくるときは,..., viele von denen よりも ..., von denen viele と書くことが多いです。英語 ..., many of which / ..., of which many やロシア語 ..., многие из которых / ..., из которых многие などの頻度と比較してください。

関係代名詞を後置詞(たとえば gegenüber や zufolge など)や,副詞のついた群前置詞(たとえば von ... aus, in ... hinein など)の目的語にすることも可能です。

定冠詞類の welcher も格変化して関係代名詞として使われますが,頻度はそう高くありません。関係代名詞節の中身の最初が関係代名詞と同形になる場合,衝突を避けるために関係代名詞の方を welch- にすることがあります。(z.B. In den Seen, welche die verschiedenen Teile des Kanals verbinden, sind die Wasserstände unter dem normalen Niveau. )

なお,welcher には属格は存在せず,かわりに普通の関係代名詞の方を使います。

指示代名詞及び関係代名詞の変化は冠詞とよく似ていますが,冠詞と異なり発音の際にはアクセントを置き,長母音にできるところは長母音にします(ただし,das と des は例外)。

付加語的指示代名詞は前置詞と現れたときに縮約を起こしません。たとえば an dem Tag と書いてあったらこの dem は 付加語的指示代名詞と判断できます。

語形変化


冠詞および付加語的指示代名詞の格変化

mnfpl
NOM/ACCder/dendasdie
DATdemderden
GENdesder


名詞的指示代名詞と関係代名詞の格変化

mnfpl
NOM/ACCder/dendasdie
DATdemderdenen
GENdessenderen/derer

斜線部が異なる部分なので,覚える部分はそこだけで問題ありません。deren/derer の使い分けについては次記事で取り扱います。



これで概形はとりあえずつかめたと思います。次記事では主に deren/derer の使い分けについてくわしくまとめます。それでは今日はここでさようなら~ ヾ(❀╹◡╹)ノ゙❀

*1:最近僕がよく使っている言葉。厳密に言えば間違いがあるけど,理解のために概説するよという意

*2:これ,定訳あるんですかね…?

*3:フランス語の il/elle と同様,ドイツ語の er/es/sie は基本的に前方照応の代名詞です

*4:ただし動詞は数の一致を起こすため,複数のものを指すときは,たとえば das sind ... のように言うことになります

*5:ただしこれは母音連続を避けて r を挿入しているというよりは darstellen にも見られる da の異形態であるところの dar を使っているだけです